『週刊新潮」2011/2/3
「幸福の科学」の不幸すぎる離婚劇
捨てられた「大川きょう子」総裁夫人の嘆き
「ママには悪魔が入っている」──。
愛する子供にまで遠ざけられる苦悩の日々を振り返り、大川きょう子氏(45)は涙を拭った。
突然「一夫多妻制」を言い出した「幸福の科学」総裁・大川隆法氏(54)に捨てられ、
教団からも「追放」……。
総裁夫人が語る離婚劇の全貌。
大川きょう了氏は秋田県の出身。
「幸福の科学」総裁・大川隆法氏と結婚したのは1988年、東大文学部卒業後のことだ。
大学生の長男を筆頭に5人の子供に恵まれた彼女は「文殊菩薩」の生まれ変わりとされ、総裁補佐や副総裁など教団の要職を歴任。
09年に一時、幸福実現党の党首を務めたことも記憶に新しい。
まさしく「夫唱婦随」で教団を運営してきた2人の関係に決定的な亀裂が入っていることが発覚したのは、昨年11月27日である。
この日、全国の教団支部に向けて衛星中継された講義の中で、
「私は今、子連れ狼状態。5人の子供を育てつつ、全国行脚をしている」
と、大川総裁自ら"家庭不和"に言及してみせたのだ。
それだけではない。
大川総裁の"特技"といえば「霊言」。
坂本龍馬など歴史上の人物や偉人、存命中の有名政治家の守護霊を自身に降臨させ、語った内容を次々と出版してきた。
その日、大川総裁はきよう子氏の守護霊である文殊菩薩を降臨させ、質問役の職員と罵り合いを演じて見せたのだ。
何とも複雑怪奇な夫婦喧嘩だが、その場では「悪妻封印祈願」なるものまで唱和された。
"封印"されるべき"悪妻"とはもちろん、きょう子氏のこと。
教団トッブ夫妻が抜き差しならない状況に陥っていることが推察されたのである。
一体2人の間に何が起こっていたのか──。
「総裁と別居状態になったのは、08年4月からです。
その4カ月後には総裁補佐などの役職も全部剥奪されました。
以来、私は教団での居場所を失い、5人の子供たちとも会えない状態になってしまいました」
と、当のきょう子氏が振り返る。
「何より辛かったのは、子供に罵倒されることです。
"ママには悪魔が入っている"と言われました。
総裁に言われ、"ママは悪魔だ"と信じ込んでいるのです。
それがあまりに辛くて自殺衝動が出て、しばらく病院にも通っていました。
ただ、その当時は私も総裁が言うのだからそうなんだろう、自分に悪魔が入っているのだろう、と思っていました。
こんなに激しい自殺衝動が出るということは、本当に悪魔が入っているのかもって……」
突然、子供から「悪魔」呼ばわりされるとは尋常ではない。
別居状態になったそもそもの原囚は何なのか。
この点、彼女の相談に乗っている知人は、
「総裁夫妻の関係がおかしくなるのは、別居する1年前、07年6月頃から。
その頃から総裁は、ある女性秘書を殊更に寵愛するようになったのです」
と、こう明かす。
「きょう子さんが、その女性をそばに置くのはやめて欲しいと訴えると、総裁は"この人がいないと仕事ができない。
仕事をするのに必要なんだ"と言い張った。
挙句の果てには"彼女は過去世(前世)の妻だ"とまで言い出したのです」
きょう子氏に聞くと、
「07年の10月、総裁は私にこう言いました。
"お前は学生時代に学んだキリスト数的な一夫一婦制という間違った思想を持っている。
エル・ーカンターレ系の基本は一夫多妻制だ"と。
なぜそんなに酷いことを言われなければならないのかとショックを受け、教団本部で幹部に泣きながら相談しました」
一夫多妻制?
ユートピアの創設を教義の柱に据える教団トップの言とは俄かには信じ難いが、実際、大川総裁の「霊言集」にもそれらしき記述が見て取れる。
《「一夫一婦制は、神の教えとは違う。
人間界の掟や契約の問題であり、基本的には、嫉妬心からできている"戒律"である」
と私は理解しております》
(『世界紛争の真実』より)
〈税金を一千万以上払ったら、結婚は自由です。
なんぼでも、どうぞ。
イスラム教の人数を超えてもかまへん」
というのが、わしの考えやな》
(『松下幸之助日本を叱る』より)
「総裁が一夫多妻制を言い出すなんて大変な事態だと思うのですが、教団の幹部は結構平然としていました。
教団では総裁が絶対なので仕方がありませんが。
私も教団幹部から諭され、一旦は冷静になった。
ところが総裁は私を遠ざける策に出た。
住んでいた教団施設から私を追い出したのです」(きよう子氏)
自宅に届けられた離婚届
翌月、きょう子氏は党首に就任した。
すでに別居中だった大川総裁からしつこく説得されて党首就任を引き受けた彼女の頭には、離れて募らす子供たちのことがあったという。
「総裁の言うことを聞き入れれば、また子供たちに会えるかもしれない、仕事で貢献すれば、家に帰してもらえるかもしれない、と考えたのです。
こんなことを言うと有権者の方々に叱られてしまうかもしれませんが、私は政治の世界で何かやりたいことがあったわけではない。
取材などで"政治家として"なんて聞かれると"ああ、何だか申し訳ないな"という気持ちになりましたね」
と、きょう子氏。
結局、この年の衆院選で同党が1議席も獲得できなかったことはご承知の通りだ。
「総裁は"150議席は獲れる"と豪語していましたが、私は強い疑問を感じていました。
会員数をもとに票読みも行ない、その予想は比例区で約45万票という実際の結果に近い数字だった。
勝てないというのは、教団の理事も皆分かっていました。
だから私はこの選挙のことを"9月までに終わる運動会"と言っていたのです。
勝てないと分かっているのに有権者に"お願いします"と頭を下げるのは辛かったですね」
選挙で没収された供託金は約11億円という巨額になった。
しかし彼女は、
「正直に言って、11億円というのは教団にとって大した金額ではない」
と、言い切る。
「何しろ、お布施だけで年に約300億円も集まりますから。
総裁が出す書籍の売上げが大きいと見られているようですが、実はそちらは大したことがない。
本の宣伝費用で利益は吹っ飛んでしまいますし、映画事業もなかなか厳しい。
やはりお布施のほうが大きい。
ただ、選挙の後、お布施が思うように集まらなくなったという話も聞きました」
いずれにせよ落選者の山を築くだけに終わった選挙は、総裁夫妻の間に走る亀裂をさらに深くもした。
「選挙期間中に私は"1人も勝てない!"と騒いで。
"どうしてこういう出鱈目なことを始めたのか" と総裁を非難する立場にいたのです。
それでも、昨年2月に娘の受験が終わったら家に戻してもいい、という話を総裁はしていた。
私はそれを信じて待っていたのです。
ところが、それも裏切られて……」
何があったのか。
きょう子氏の相談に乗っている知人(前出)が語るには、
「総裁が新たな女性職員を寵愛している、という話がきょう子さんの耳に入ったのです。
総裁に気に入られた彼女は千手観音の生まれ変わりだとされ、いきなり教団の専務理事に取り立てられたという。
その上、あろうことか"大川姓"を名乗らせている、とも。
ショックを受けたきょう子さんは傷心を癒すためか、昨年3月、イスラエルヘ旅行に行ってしまいました」
帰国した彼女を待っていたのは、離婚届だった。
「仏が帰国してすぐ自宅に教団の幹部3人がやって来て、お手伝いの女の子に離婚届を渡して"明日までに判を捺して返せ"と言ったのです。
離婚届には総裁の判子が捺してありましたよ。
人を人とも思わないような強引なやり方に驚きました。
話し合いもしていないのに、明日までに判を捺せなんてあり得ません」
と、憤慨するきょう子氏がここに至ってようやく気付いたことがある。
「やっぱりこの人おかしい、と思い姶めた。
怖い、と。
もしかしたら教団も全部おかしいのかもしれない、と。
秋田の実家にも帰って相談しました。
でも、自分も信者の1人である母は"我慢しなさい"という。
"総裁はよく気が変わるから、また変わるかもしれない。
まず黙りなさい"と。
でも私は、"幸福の科学が間違った宗教だと分かっていて続けたら、私はどんな地獄に落ちるか分からない"と家族に言い続けました」
そしてきょう子氏は昨年10月、最終的に離婚を決意したのである。
激しいバッシング
「10月19日に、弁護士同士の第1回の話し合いが持たれました。
そこできょう子さん側は"財産分与で、今住んでいる家の権利を譲って欲しい"と求めた。
すると、相手側はすぐに家の名義を総裁個人から教団に変えてしまったのです。
教団に寄付する、と。
離婚の話し合いを始めてからそういうことをするのは詐害行為として禁止されているにもかかわらず、です」
と、先の知人は語る。
『教団側の主張は、きょう子さんに5000万円を譲るからそれでマンションを買え、というものでした。
それ以外に財産分与の意思はない。
教団のお金は渡さない、というのです。
10月28日には教団からきょう子さんに"退職通知"が届いた、事実上、教団から追放されたわけです」
彼女が離婚・調停を申し立てたのは、11月9日。
「教団の職員2人が突然自宅に来たのは、11月27日のことでした。
"ここには職員が住むことになりました。
〈大川〉の表札のかけかえ工事を明日行います"と言うのです。
弁護士が教団と交渉してくれて何とかエ事は止まったのですが、そこから私に対する激しいバッシングが始まって……。
"悪妻封印祈願"が全国のセミナーで行なわれるようになったのも、その頃からです。
離婚調停は今年1月11日に2回目をやって、打ち切りました。
今後は、裁判で常識的な範囲で配偶者の権利を争うつもりです」(きょう子氏)
一連の経緯について幸福の科学グルーブ広報局は、
「きょう子氏の一連の主張は全て事実ではありません。
信仰を失った者は教祖の妻や補佐役でいられるはずはなく、総裁が特定の幹部を特別扱いすることや一夫多妻を説いて実践するなどありえません。
また大川姓を始め、法名を与えられた幹部は男女多数存在します」
きょう子氏が慨嘆する。
「子供たちの親権についても、弁護士の先生に背中を押されて争うことにしました。
せめて面会権でもいいから認めて欲しい。
このまま子供から"悪魔"と言われ続けるのは辛いですから‥‥。
でも向こう側の言い分は、財産は渡さない、子供にも会わせない。
こういうのをカルトと言うのではないでしょうか?」
幸福の科学を揺るがす「不幸すぎる」離婚劇。
今後の波乱は必至である。